現在の青岸渡寺本堂は、素木造の壮大な建築で、豊臣秀吉が弟秀長に命じて再建された桃山時代の建造物です。本尊の如意輪観音が出現したと伝えられる那智大滝を拝するように建てられています。
堂内部は多く訪れる巡礼者のための広い空間が設けられ、外陣には再建の際に豊臣秀吉により寄進された日本一の大鰐口があります。直径1.4m、重さ450kg、鰐口には再興の趣旨が刻まれています。
本堂の北にある宝篋印塔は、元亨二年(1322年)に尼僧が願主になり造立したことが刻まれています。高さが4.3mある大型の石塔で美術的にも優れた石像構造物です。
那智大滝を背景に三重の塔が映えています。昭和47年、300年ぶりに再建されたこの宝塔は、那智山が霊場として隆盛期を誇った平安末期に建立されたものと推定されています。
当時の那智山には堂塔伽藍は七堂三十六坊を数えたと伝えられていますが、全盛を誇った霊場も、豪族の対立によって一山の社堂は消失、三重塔もまた惜しくも消失してしまいました。
この三重塔から、那智の滝の全景、太古を思わせる原生林、そして那智山内や遠く太平洋まで見渡せる那智山第一の風景が望めます。