那智原生林を背後に、断崖133メートルを流れ落ちる大滝。
那智の大滝は、熊野那智大社、青岸渡寺の信仰の原点であり、古くから奥深い熊野の山々には神が宿る霊地として崇められてきました。
千古から続く不変の滝の音が、霊力が得られるように神秘の響きにつつまれます。
生命を育み育てる水の霊力に助力を求めて、みそぎ・滝行など水は神仏の行事や修行と深い関わりを持ってきました。
かつてはこの大滝にも上皇や修験道の人々が滝行のためにおとずれました。
大滝に至る参道の両側に、12世紀から16世紀にかけて多くの経塚がいとなまれました。お釈迦様入滅の56億7千万年後に弥勒菩薩が下生して、衆生を救う時のためとしてこの経塚が設けられたのです。1918年の発掘調査によっておびただしい数の仏教遺物が発見されています。
お滝は「一の滝」ともいわれ、上流に「二の滝」「三の滝」と続き、那智原生林には四十八もの滝があり、「那智四十八滝」として修験道の行場とされてきました。